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「ラブライブ!」ライブシーンの3DCGの演出について [アニメCG]

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「TVシリーズ」における3DCGの導入には基本的には賛成である。
ただ、そこにおいて製作側の金銭的な理由が垣間見えてしまうようなものについてはその限りではないが。

「ラブライブ!」はアイドルアニメである。登場するキャラクターがアイドルとなってステージに立って歌って踊る、それこそが本質であり作品の根幹を成す。そしてそれには非常に手間がかかる。単にアクションシーンでキャラクターが縦横無尽に動き回るのとはワケが違う。初めに歌があり、そして振り付けがあり、それらに合わせてアニメーターが手作業で合わせて絵を描いていかなければならないからである。

京都アニメーションの「涼宮ハルヒの憂鬱」以降、劇中或いはOPEDで登場人物が歌って踊る(楽器を弾く)作品は飛躍的に増えた。そしてそれは誰が見ても高度な技術である事は明らかだった。「ハルヒ」で手ごたえを掴んだ京アニは続く「らき☆すた」のOPでもそれを取り入れ、そして「けいおん!」では3クール中の全OPED(実に6回)全てにキャラクターが楽器を演奏し歌う演出を施すだけでなく、作品自体を「軽音部」の話にすることによって劇中でも楽器、歌の練習及びライブの演奏をするという脅威のパフォーマンスを見せつけ、結果として「けいおん!」は名声を勝ち取り、ライブの演奏を作画するという試みは一つの到達点を迎えた。

一方、かの東映アニメーションが誇る人気アニメ「プリキュア」シリーズでは09年の「フレッシュプリキュア!」に始まり10年の「ハートキャッチプリキュア♪」、11年の「スイートプリキュア♪」、12年の「スマイルプリキュア!」、そして現在放映中の「ドキドキ!プリキュア!」含め全ての作品のEDにおいて劇中キャラクターの3DCGモデルによる歌って踊るアニメーションが製作されている。と、書いておきながら何ではあるが実は私は「ドキドキ」のEDしか見たことが無いそれも一度だけ。しかし一度で十分だった。驚愕した。TVアニメの3DCGはここまできているのか、と。

プリキュアEDは他のTVアニメシリーズとは扱いが異なる。3DCGは同じ東映のスタジオで製作されているものであり監督や演出の人間は変われど09年から一貫して内製で行われているからである。つまり一般的に外注が制作することが多い3DCG部分に対して東映は「プリキュア」という同じラインで制作することによって「経験と文脈」を文字通り脈々と受け継がせているのである。そして、4クール中前期後期の2パターンのEDを一年かけて流していく、つまり単純に考えて1分30秒の映像に6ヶ月のリソースをかけられるということになる。あくまで単純計算だが。そしてそれが09年から行われており、その技術の結晶が今現在流れているEDの映像なのである。そしてそれは凄かった。


セルシェーディングされた3DCG映像について「手書き・セル画のようだ」と評すのは現在褒め言葉とされている。劇場アニメーションでいえば「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の表現が今のところ一番だが、

TVアニメでいえば恐らく「プリキュアシリーズ」のEDが「最も手書き・セル画に近い3DCG映像」ではないかと思う。とはいえ「近い」であって流石に区別が付かないというほどではない。手書きによる歪みや誇張の表現は3DCGには困難であり、また不自然なほど整った作画や動きはそれだけで一見して3DCGだと分かってしまうものである。ただ、そもそも本作の場合リミテッドアニメ的なコマ落としはあえてしていないのだろう。だが、それを差し引いても「プリキュア」のEDは素晴らしいものであり、今後もTVアニメにおける3DCG表現のメルクマールとして機能していくことは間違いないだろう。

では、そこにおいてアイドルアニメとして制作された「ラブライブ!」のライブ映像とは如何なるものなのか。聞いて驚け、「ラブライブ!」は史上初のセル画と3DCGのハイブリット作品なのである(多分)。いや、同一のモデルについて手書きと3DCGを使い分けている作品は他にも昔からあるはずだ。ああ、恐らくはあるだろうその限りにおいては。だが「ラブライブ!」はその方法論、引いては3DCGの仕様における文脈が違うのである。

例えば「ストライクウィッチーズシリーズ」(08-10年)。空戦がメインで11人のキャラクターが銃器と飛行ユニットを装着し縦横無尽に飛び回るミリタリーアクションものである。戦闘時は一面青空の背景作画がメインとなるとはいえ11種類ものキャラと兵器関連描写をそれぞれ書き分けるのは流石にというか当時のGONZOには(今でもだが)厳しかったのか特に2期に関しては3DCGによるキャラのモデルによる代用が頻繁に見られたのだが、お世辞にもそのクオリティは褒められるものではなかった。というかはっきりいって「糞」だった。もう一度いう「糞」だった、と。

「ストライクウィッチーズシリーズ」における3DCGは単なる代用に過ぎない。特に引き絵での複数キャラの場面などでそれが顕著になることからも明らかである。そしてその「代用」詰まるところのクオリティコントロールにおいて手書きによって力を入れる部分を取捨選択、が一般的なアニメでの3DCGの用法と考えられる。では「ラブライブ!」は何なのか。

「ラブライブ!」における3DCGモデルの使用は上記の「代用」も勿論あるが、それとは別にセル画と3DCGモデルの「融合」が挙げられる。どういう事か。実は本作には放映したアニメに先行して制作された「初期PV」が存在するらしいのだが(見てない)、その時からこの手法は取り入れられているらしい。具体的には手書きのキャラクターが踊っている後ろで3DCGモデルのキャラが踊っているというものである。文字として書き起こすと極めて平凡な印象を受けるだろうが観たことが無い人は想像してみてほしい。メディアは変わるがかつてプリレンダリングムービーの中でリアルタイムレンダリングされたキャラクターを動かすという大胆な試みをした作品があったのを覚えておいでだろうか。かの「FFVIII」と「FFIX」である。その試みはユニークではあったがお世辞にも優れた表現と言えるようなものではなかった。そう、イメージ又はアプローチとしてはとしてはアレに非常に近い。アレがマズかったのは両者の解像度の差が著かったという、その一点に尽きるだろう。

そして「ラブライブ!」ではクオリティコントロールがある程度効くOPやEDではなく本編にその手法を取り入れたのである。手書きと3DCGモデルの同一画面上における併用を。そしてそれは一応成功している。というのも未だ三話目までしか観れていないからだ。当該シーンは第三話のファーストライブのシーン。BDで言えば43:04~43:10の7秒間である。バストアップでのことりと海未の二人が手前で歌うその後ろで穂乃果が踊るこの7秒間。私は一回目の視聴では3DCGモデルに全く気が付かなかった。歌っている手前二人に自然と注目してしまったということもあるが、整理して観れた二回目で気が付いたということはそれはつまりこの試みは成功したも同意である。

では、本作の方法論がアニメ史におけるそれまでの文脈と異なるとはどういうことか。前述したように本作では先行PVでも敢えてその手法を使っているとのこと。そして第三話を観た人は分かるだろうがあの7秒間は別に穂乃果が映る必要は無い。三人を横一列に並べてことりと海未を映せばいいし、そもそも穂乃果が画面に映るような逆三角形の並びにする必要は無い。つまり、あれは3DCGモデルを意図的に手書きのキャラと同一画面上に並べているのである。いや、アレは穂乃果を手書きで描く余裕がなかったからだ。うん、であるなら上記の通りだろう。

3DCGモデルのキャラを「代用」としてではなくほぼ同等のものとして意図的に併用する。この方法論は人外のモデル―ロボット、兵器、車でならいくらでもあった。だがそれを人間のモデルで積極的に試みた作品は「ラブライブ!」が初だろう(恐らく)。そして驚くべきことに本作における手書きと3DCGモデルの併用―従来の「代用」としての方法論は第一話から既に確立している。それはOPと第三話でのライブ映像を見れば明らかだろう。

「バストアップは手書き、スカートから下が入る引き絵は3DCGで」

本作の基本スタンス、法則、原則、方法論はこの一言で説明できる(但書-三話目の時点)。シンプルながらこの原則は見事に「アイドルのライブ映像」に即したものになっている。

アイドルの命は何か。ゴマキ世代のモー娘。以降アイドルに興味が無くなった私でもそれ位は分かる。顔である。顔立ち、可愛さではない、表情である。勿論歌って踊れるアイドル戦国時代である現代において身体の動きが重要である事は言わずもがな。大事なのはアイドルがどの様な表情で、喜怒哀楽を表現して歌い、踊っているかである。シンプルに言えば人間性である。「ラブライブ!」ではバストアップ時の9割は手書きである。何故か。セルシェーディングの3DCGモデルでの映像制作は基本的に「モデルが弄れない」からである。勿論カットごとに手直しは当然するだろう。特に「プリキュア」場合は。だがTVシリーズで制作され週単位での納品が求められる「ラブライブ!」ではそうもいかない。何せ9人のキャラを管理して分単位のライブ映像を制作しなければならないからだ。3DCGモデルの表情をカットごとに細かく手直しするような手間はかけられない。となるとバストアップ時に画面に大きく映されるアイドルの「表情」は当然手書きにならざるを得ない。そこで本作の原則である。
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「ラブライブ!」は本当に気持ち良いくらい使い分けがはっきりしている。そしてそれによって映像が締まることを恐らく理解している。ライブ時のキャラのバストアップでの表情は非常に豊かだ。「あざとさ」も含め喜怒哀楽を表現するその様はアイドルがアイドルしているそのものである。そしてこの使い分けは単に表情への効果に留まらない。引き絵を3DCGにすることによって安定した絵での踊り全体の流れが生まれ、バストアップ時にそれぞれの個性が表現される。そして両者を歌に合わせてテンポ良く切り替えることによって、手書き部分と3DCG部分の併用にリズムが生まれるのである。これは原則が明確になっているからこそ生まれるものである。この点もあって本作のライブ映像は本当に素晴らしいものになっている。基本的にカメラの動きは最小限に。アニメ的な激しいカットバックや変にエフェクトに頼らずあくまで歌っているアイドルを中心に展開するカメラワーク。オーソドックスといえばそうだが見ている側としては全体の流れが非常に分かりやすい。正直キャラが出揃っていない第一話の時点でいきなりOPの9人のライブ映像を見せられても全く心には残らないのだが、第三話の頃には気にいっている筈なのでそれは仕様である。現に私はOPだけで恐らく40回以上は観ている。

また、3DCGといえどライティングや角度によっては手書きと遜色ないようなシーンも幾つかありそれらはOPの映像でも見ることが出来る。具体的には『♪(わかってる)楽しいだけじゃない♪』での左手にいる生徒会長と『♪集まったら強い自分になってくよ♪』での右手にいる南ことりである。この2つのカットは特に自然に見えるのだが、実は南ことりに関しては殆どのカットで一番違和感が少ないのである。流石に横を向いたときのカットは第三話のライブも含め違和感が出てしまうが。明確な理由は分からないが、恐らくおでこが髪で隠れているため輪郭線の延長線上における3DCG的な卵形の顔の印象が薄れているか、それとも日常シーン含め手書き部分との表情の差が少ない事が考えられる。3DCGモデルの場合どうしても修正を入れない限り表情がどのキャラも似てしまい画一的な違和感が出てしまうのだが、高坂穂乃果ほど表情が豊かでもなく、かといって園田海未ほど笑顔に乏しいわけでもない。本作における3DCGモデルのデフォルトの表情と手書き部分での表情が近いことが違和感の低減に寄与しているのではとも考えられる。あくまで推測の域を出ないが。ただこの場合、キャラの文脈如何で3DCGモデルへの違和感が変動してしまうので一般化出来ないという問題がある。

一つ気になったのが、第三話でのライブ時のモデリングには髪の毛のセルフシャドウが導入されているのにOPではどのモデルにも髪の毛のシャドウが全くかかっていないので、それによって違和感が出ている事。これは制作期間の問題という事でいいのだろうか。アレがあるのと無いのとでは結構違うのだが。しかしながら第三話のファーストライブは最高である。逆境からの力強い曲の入りは王道ながらも流石にくるものがあった。3DCGは勿論のこと手書き部分も素晴らしく、特に42:39からの怒涛のバストアップ7連発は圧巻の一言。

第三話までを観た限りではあるが「ラブライブ!」では技術や小手先の演出が先行するのではなく、アイドルのアイドルらしさ表現したライブ映像を如何に効率よく制作するかといのを良く考えて制作されているように感じる。まさかTVシリーズの3DCGでこんな作品に出会えるとは思いもしなかったのでこれは本当に喜ばしい限りである。2014年の春に二期が放映されるらしいが更なる表現の向上を望みたい。
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因みに本作のOP映像において手書きと3DCGの区別がはっきりとは分からない人のためにガイドライン的に記しておく(大丈夫かコレ)。因みに赤字が3DCG部分。

タイトル[4小節]
3DCG[2小節]
セル画[3小節]
3DCG[1小節]
真っ直ぐな想いがみんなを結
本気でも不器用 ぶつかり合うこころ
それでも見たいよ大きな夢は
ここにあるよ 始まったばかり
(わかってる)
楽しいだけじゃない 試されるだろう
(わかってる)
だってその苦しさもミライ
(行くんだよ)
集まったら強い自分になってくよ
(きっとね)変わり続けて(We'll be star!)

それぞれが好きなことで頑張れるなら
新しい(場所が)ゴールだね
それぞれの好きなことを信じていれば
ときめきを(抱いて)進めるだろう

(怖がる癖は捨てちゃえ)とびきりの笑顔で
(跳んで跳んで高く)僕らは今のなかで

輝きを待ってた




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