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「アイカツ!」第103話 氷上スミレの「タルト・タタン」での3DCGライブ演出。 [アニメCG]

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本題の前に前回の3期における3DCG演出の話について若干補足。

前回、本編とOPでの3DCGについて技術的な乖離があると指摘したが、103話の3DCGダンスパートではそれらが解消されていた。具体的には髪の毛を基本とする揺れモノなのだが、OP程の自然な揺れにはなってはいなかったが102話の様な不自然な硬さは無くなっており前髪、後ろ髪共に良く揺れるようになっていた。

また髪の毛についてはもう一つ技術的な変更点が認められた。
これもOPでは既に行われていたのだが「髪の毛の輪郭線の増減」が103話の3DCGモデルにも確認できる。どういう事かというと、アニメCGのモデリングというのは現実の人間の様に髪の毛を何十万本と生やすことが出来ず、マシンスペック的にもセルルックな3DCGの観点からも髪の毛の表現は何本かの束に分割して表現するというのが日本のアニメCGにおいては現実的な選択肢となっている。写実的な表現を追及しているディズニー、ピクサー、ドリームワークスなどのフルCGアニメ作品の多くが動物の体毛や人間の髪の毛を現実と同じ様にモデリングしているのはスタジオの規模や技術的な問題も当然あるが、そもそも目指している表現が異なっているからである。そしてこれは「アイカツ!」に限った話でもない。

102話と103話を比較してみると良く分かるのだが、特に後ろ髪を見てみると102話では髪の輪郭線が常に浮かび上がっており長さも固定されているが、103話では髪の揺れに合わせて髪の束と束の設置面から輪郭線が消えているのが分かる。
左が102話、右が103話。
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前からのアングルで同じく左が102話、右が103話。
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103話での分かりやすい部分を抜粋。




ただ、これは何も3期から実装されたワケではなく2期では常に行われていたので別段目新しい表現というものでもない。不思議なのは102話ではこれが実装されていなかったという点なのだが、もしかしたら前回書いたように制作上の問題で102話のライブシーンには実装されていなかったのかもしれない。そうなるとおそらく制作された順番としては102話のライブシーンが先に制作されたその後に3期のOP部分が制作されたと考えるのが妥当だろう。そう考えると102話のライブシーンに不自然な点が多くみられた理由も納得がいく。トゥウィンクルスターカップの2組のライブステージと102話のライブステージ、3期OPの3DCGダンスパートと3期メンバーのモデリングという過密スケジュールを考えると102話のライブステージは細かい調整があまり出来なかったのかもしれない。OPの揺れモノが自然なのもダンスパートが10秒程度しかない事により細かい部分まで調整が出来たという事からなのかも。勿論全て憶測に過ぎないが。

あと3期の細かい変更点として3期のモデルは中学生という設定上から2期メンバーよりも背が低くなっており、口の位置が若干下にずらされているのか、2期メンバーのモデリングによく見られた「口が半開きの状態での下唇と顎の間の空間による不自然な表情の硬さ」が解消されているように見える(気のせいかも?)。

第103話「いいこと占い」ライブパート
氷上スミレ / 「タルト・タタン」
オディールスワンコーデ / LoLi GoThiC


「ロマンスストーリー」をテーマに「白鳥の湖」や「白雪姫」をモチーフとした「ロマンスドレス」のコーデがメインとなるアイカツ3期。星宮いちごの一日マネージャーとして同行したそのお礼として氷上スミレはLoLi GoThiCブランドの「オディールスワンコーデ」のカードを貰う。ブラックスワンコーデの名の通り白鳥の湖における「オディール=黒鳥」のイメージと黒を基調としたゴシックロリータの両方を想起させるドレスになっている。

アイカツには珍しい癖の無いロングヘアーで前髪を切りそろえた髪型からてっきりクールビューティー的なキャラクターだと思っていたのだが、102話と103話を見る限りではこれまでの氷上スミレの性格は物静かで他人との争い、競争を好まず「美しき刃」こと紫吹蘭の様な一匹狼とは別のネガティブな意味で他人と距離を置いていた人物とされている。スミレの好きなブランドである「LoLi GoThiC」(ロリゴシック)は名前の通りゴシックロリータを基本としたデザインのブランドで部屋のポスターにもあったように2期メンバーである藤堂ユリカが愛用していたブランドでもある。一見クールビューティーで実は物静か、という白髪縦ロールでツリ目の藤堂ユリカにも通ずる性格を有する氷上スミレがLoLi GoThiCに惹かれたのは偶然かはたまた必然か。

劇中のアイドルが使用するアイカツのカードにはそれぞれポイントが振られている。実際の筐体ではこのポイントを元にゲームが行われ勝敗が競われるらしい。アニメ本編ではカードが有するポイントによる優劣は省かれているが「プレミアムドレス」に代表されるようにダンスだけでなくコーデ(衣装)も重要であるという事は幾度も説かれてきた。ポジティブ志向を基本とする「アイカツ!」だがそこには常に勝敗が描かれており、カードには「勝負服」としての意味が多分に含まれていた。

推定600歳の吸血鬼の末裔を自称する藤堂ユリカは昼夜、トレーニング、ライブステージを問わず常に己のキャラクターを演じ続けてきた。気弱で他人に対して思わず敬語を使ってしまうような素の自分とは対照的なそのキャラクターはLoLi GoThiCのドレスを着た時一段とその強さを増す。89話でのプレミアムドレスによるライブパートは藤堂ユリカにおける集大成とも言える圧巻のパフォーマンスだった。

非日常の服であるドレス、中でもヨーロッパ18世紀の衣装を取り入れ時代性を兼ね備えたゴシックロリータの衣装は正に非日常の最たるもの。儀式的な側面の意味合いが強いドレスは正に勝負服そのものであり、そこに勝敗が無くとも着る者の精神性が強く表れている。そこにおいてゴスロリが普通のドレスと異なるのはそれが日常の空間で着こなされるという点である。東京都心でゴスロリの格好をした女性を何度か見たことがあるが、印象に残っているのはその服装よりも寧ろその立ち振る舞いだった。彼女らは大抵一人である事が多く、周りを気にせず凛とした佇まいがありながらも常に無表情なその姿は正に人形と呼ぶに相応しかった。ゴスロリの服装を日常の空間で着る彼女らはおそらく内面からゴスロリを纏っているのであり、頭からつま先までゴスロリの服装をする事によって正に言われるところの人形的である事を演じているのだろう。その身に纏った服が内面からくるものであるならばそれはもう勝負服などではなく「戦闘服」である。

藤堂ユリカはLoLi GoThiCを着ることによって素の自分とは対極のキャラクターを演じてきた。藤堂ユリカにとってのLoLi GoThiCは精神的な支えであると同時に憧れの自分、目指してるスターでもあった。誰よりもLoLi GoThiCが似合う、そしてLoLi GoThiCが相応しい様な自分に。では氷上スミレがLoLi GoThiCに惹かれた理由は何だったのか。ブランドの衣装デザインによるものか、藤堂ユリカというアイドルに憧れたのか、それとも。

スミレが103話で着用するオディールスワンコーデ。
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本編のイメージからすればスミレの印象は白鳥に近いものだったが、渡されたカードはスミレの印象とは対極であるまさかの「黒鳥」。白鳥と黒鳥、オデットとオディール。白鳥の湖において王子と愛を誓った白鳥になりすまして王子を誘惑しその愛を奪うという、純真無垢な白鳥とは対照的なファム・ファタールとしての存在。
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普段の物静かなスミレからは想像出来ない様な強い意志を感じさせる表情が見られ、80年代のアイドル歌謡的な曲と挑発的な歌声によってその名の通り黒鳥的な印象のライブステージになっている。それと同時に、まだまだ未熟さが残る歌唱力と黒鳥の衣装でラブソングを歌う中学生アイドルというその様は80年代アイドルをコンセプトにデザインされているようにも見えるのが面白い。因みに「タルト・タタン」のライブステージは恐らくアイカツ史上でも稀に見るカット数の少なさで長回しが多用されているのでその辺りも意識しているのだろう。

画像にもあるようにステージに印象的に配置された鏡だが、恐らくこれの意図するところは一つだろう。鏡像としての自身を映す対象性と見る者自身の内面を顕わにする精神性という鏡の性質を考えると「タルト・タタン」においてステージに配置された身の丈ほどにもなる鏡が何を表すのか。言わずもがな、白鳥と黒鳥である。白鳥が存在してこその黒鳥であるならば、黒鳥の衣装を身に纏ったスミレを映す鏡の中の鏡像は白鳥に他ならない。妖艶に舞うスミレのその様は理想の自分なのか、はたまた黒鳥に身を任せて開放された自分自身なのか。鏡に映し出された本当の自分は果たして「どちら」なのか。そして、その鏡が割れる意味とは。
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ここで個人的な解釈を書いてしまおうと思ったのだが、こういったタイプの演目は他人のイメージが先行すると想像の余地が狭まってしまうのでライブステージを見た個人の解釈に委ねたいと思う。なお、103話を観て「タルト・タタン」のライブステージにいまいちピンとこなかった人は是非映画「ブラック・スワン」を観てみると良い。あれは極端な例だとは思うが白鳥の湖における黒鳥がどういうものなのかが良く表れているし、何より映画としても非常に面白いので個人的にもオススメの作品である。その曲調と相俟って賛否の分かれる「タルト・タタン」ではあるが個人的には何度も見返してしまう位の不思議な魅力を感じてしまった。


参考資料
バレエ「白鳥の湖」の研究
・映画「ブラック・スワン」 ダーレン・アロノフスキー監督作、ナタリー・ポートマン主演

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