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「エクソダス 神と王」(2014年) 感想 [映画]

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日本公開 1月30日

監督 リドリー・スコット
出演 クリスチャン・ベール
    ジョン・タトゥーロ
    ジョエル・エドガートン
    シガニー・ウィーバー

シドニーのEVENT CINEMAS中型スクリーンにて鑑賞。

「モーセの十戒」をリドリー・スコットの解釈の元に新たに制作された本作。十戒といえば1956年に公開されたセシル・B・デミル監督作、チャールトン・ヘストン主演で制作された映画「十戒」を誰もが思い浮かべるだろう。232分という超大作であり、モーセの十戒という物語に必要な要素を一つ一つ丁寧にモーセの出生から十戒の誕生までを描いた決定版とされている。リドリー・スコットはそれらを150分という尺の中に収めるように本作を制作している。56年版でさえ4時間近くかかっていたのを150分に収めなければならない以上当然削らなければならない部分が出てくる。

リドリー・スコットは本作において「モーセとラメセス」「モーセの家族」の二つに焦点を絞り、56年版のチャールトン・ヘストンよりもより人間的なモーセ像を提示している。そのスター性、肉体的説得力、それに加えて神からの啓示を受け超常的な力によって神の如き振る舞いを見せていたチャールトン・ヘストンに対して、クリスチャン・ベール演じるモーセは神の振る舞いに悩み、葛藤するという徹底的なまでに「人」として描かれている。そのため56年版のようなモーセが人々の救世主であるような描かれ方はされない。おそらくこれはリドリー・スコット個人の神に対する人間の立場という考えが表れているように思える。ジャンルは違うが最近では「プロメテウス」も神と人間の話だった。

56年版ではモーセの出生から始まっていたが本作ではモーセ成人後の遠征から始まる。150分で十戒が誕生しなければならないので全てを描くわけにはいかない。他の場面も結構省略されており、宮殿内でのモーセとラメセスとネフレテリの間に生ずる愛憎劇や他の人物との絡みも大幅に短縮されている。モーセの出生は序盤で早々に明かされ直ぐに追放されるのだが、56年版との最大の違いはモーセが奴隷従事になるシーンの一切が省略されている事である。つまり、ばれた途端に追放という流れである。そのためモーセが奴隷としての痛みを背負うという十戒の中でも重要な部分が描かれない。

序盤でモーセが追放されるので本作のバランスは56年版と大分異なる。追放後の家族との生活は勿論の事、モーセが再びエジプトに戻ってからの描写は56年版よりも過剰に描かれている。ネタバレになるので詳細は書かないが特に面白かったのは本作ではモーセがラメセスに対して明確に「反旗を翻す」意思を示している事である。56年版ではモーセ一人が宮殿に赴き災厄を招くという描かれ方をしていたのだが、この変わりっぷりはある意味現代的というか「現在のアクション映画的」といえるだろう。一言でいうなら「燃える展開」である。

そしてもう一つ特筆すべきはラメセス引いてはエジプトに対する厄災の数々である。56年版では技術的制約で控えめに描かれてきたが本作ではVFXによってこれでもかという程に描かれる。元々バイオレンス描写に容赦ないリドリー・スコットだが、まさか十戒における十の災いを徹底的に描くとは思わなかった。これも詳細は観てのお楽しみだが、容赦の無い阿鼻叫喚の地獄絵図のその様は観ているこっちが引いてしまう位のもので、気持ち良い位に人という人が死にまくるので逆に清々しいと言っても良い程。というか余りに酷いのでラメセス含めエジプトの民が可愛そうに思えてしまう。

リドリー・スコットで歴史モノといえば「グラディエーター」「キングダム・オブ・ヘブン」「ロビンフッド」など、戦い、合戦シーンが印象的ではあるが、モーセの十戒を元にしているため本作では戦いのシーンはかなり少ない。一番派手なのが冒頭の遠征時の合戦シーンであり後は目立った戦いのシーンが殆ど無いのでそこを期待していると肩透かしを食らってしまうので注意して欲しい。本作の主題はあくまで「人としてのモーセ」なので。だがそれでも合戦シーンは流石に見応えがあり、ベン・ハーに登場した古代の戦闘用馬車が登場しそれによるガチンコ戦車バトルが繰り広げられたり、従来のリドリー作品の合戦シーンの殺陣よりもスピードが大分速くなっているので中々面白い。戦いのシーンが控えめながらも「弓」の描写だけはそれなりにあり、飛び道具の描写の上手さは流石はリドリー・スコットといったところである。

そして美術の徹底振りは言わずもがな。本作はRED EPIC DRAGONによる6kの解像度で撮影されているが、衣装、背景などの美術もその高い解像度に耐えられるように細かい部分まで、そして圧倒的な物量で描かれている。美術に関しては本当にいつものリドリー作品といったところだろう。過去最大の予算と言われているだけあって当然VFXショットも大量にあるのだろうが美術の緻密さから遠景の壮大さまで良く出来ている。マスター自体は2kで制作されているが解像度不足を感じさせない、寧ろ全編異様なまでの立体感が表れているので画質的にも文句なしである。

今回は時間が合わなかったので2Dでの鑑賞となったが3D変換はあのステレオDが担当しているので6k撮影の映像の精細さと相俟って良い3D作品になりそうである。日本ではIMAX 3Dでの上映が予定されているので観るならIMAXが良いだろう。また本作はドルビーアトモスにも対応しているので対応映画館ではアトモス版も上映されるかもしれない。空間を生かした迫力ある映像が多いのでアトモスとの相性も良さそうである。

作品そのものの評価としては56年版の「十戒」に軍配が上がってしまうが、56年版とは全くアプローチを変えているのでこれはこれで面白い。ダークナイトを引きずったような内省的なモーセではあるが、これはこれでクリスチャン・ベールのイメージを利用したキャラクター造詣とも言えるので逆に説得力があると言える。
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